前橋地方裁判所 昭和62年(行ウ)8号 判決 1989年1月31日
原告 青山貞一 外二三名
被告 榛東村長
主文
一 原告らの訴えを却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実
第一当事者が求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、別紙物件目録記載の村有林を株式会社ジャパンセントラルコロシアムに賃貸してはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
(本案前の答弁)
主文同旨
(本案に対する答弁)
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求の原因
1 原告らはいずれも群馬県北群馬郡榛東村の住民である。
2 被告は、株式会社ジャパンセントラルコロシアム(以下「訴外会社」という。)に対し、村有林をゴルフ場建設用地として貸すことを前提として、「榛東村財政基金条例の一部改正について」と題する議案を村議会に提出し、昭和六二年六月二二日、これを可決成立させ、榛東村が所有する別紙物件目録記載の土地(以下「本件村有林」という。)を訴外会社に賃貸しようとしている(以下「本件賃貸」という。)。
3 しかしながら、本件賃貸は、以下の点から、違法である。
(一) 村有林は、永年にわたり多大の犠牲を払って造成してきた貴重な文化財であり、その維持、管理、利用は、榛東村民の福祉百年の大計に基づいてなされなければならないところ、本件賃貸は、一営利企業に過ぎない訴外会社の利益を図ろうとするものであり、もとより村有林の管理者である被告が村民に対し負うべき善良な管理者としての管理義務に違反するものであって、村民に対する背任的行為である。
(二) 本件村有林は、榛東村の所有する村有林中最も利用価値がある部分であり、これを賃貸することは、永久にその使用権を放棄するに等しく、将来他の目的に使用することが不可能となり、また、本件村有林をゴルフ場として訴外会社に使用させてしまうと、小面積で足りる複数の優秀企業を同所に誘致することもできなくなる。
(三) ゴルフ場の経営主体となることが予定されている訴外会社は、同社の資産、信用、あるいは同社経営者の資力、信用、経歴等からして、本件賃貸の契約相手として適性を欠いている。
(四) 本件村有林を訴外会社に賃貸してしまうと、水害その他災害の防止を一営利企業である訴外会社に委ねることになり、災害予防の保証がない。
4 そして、本件賃貸がなされるに至れば、榛東村は回復し難い損害を受けるおそれがある。
5 そこで、原告らは、昭和六二年一〇月三日、地方自治法二四二条一項に基づき、榛東村監査委員に対し、被告が本件村有林を訴外会社に賃貸することの差止措置を求める監査請求をしたところ、右監査委員は、同年一一月二六日、理由なしとして右監査請求を却下した。
よって、原告らは、被告に対し、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づき、本件賃貸の差止を求める。
二 本案前の主張に対する原告の反論
被告が、本件村有林を訴外会社に賃貸することに異常な執念を持ち、自己の政治生命を賭けていることに加え、被告が、本件訴訟において、「本件の場合、昭和六二年一一月三〇日、県において事前協議が受け付けられており、通常であれば、事前協議は受付後約四ヵ月半で完了し、都市計画法、森林法の許可申請手続きを経ても、昭和六三年七月末には県段階の事務処理は終了するはず」(昭和六三年六月一四日付被告準備書面)と主張していること、更にゴルフ場開発ブームが鎮静していない昨今の情勢からみて、被告が本件賃貸をすることが相当の確実さをもって客観的に予測されることは明白である。
三 本案前の主張
1 訴外会社が、榛東村との間で本件村有林の賃貸借契約を締結するためには、群馬県大規模土地開発事業の規制等に関する条例(以下「県条例」という。)七条により、群馬県知事と懸案のゴルフ場開発に関する開発事業計画について事前の協議を行い、その過程で公害ないし災害防止のための調査、あるいは訴外会社の資力調査等多岐にわたる審査を受けたうえ、更に、都市計画法二九条及び森林法一〇条の開発許可手続を経なければならない。しかるに、現段階においては、右事前協議の手続は未了であり、かつ、その見通しも立っておらず、右手続の結果如何では前記賃貸借契約の締結が不可能になることも十分に考えられる。したがって、現時点においては、被告が訴外会社との間で右賃貸借契約を締結することが相当の確実性をもって予測される場合という、地方自治法二四二条一項所定の要件を欠き、原告らの本件訴えは不適法であり、却下されるべきである。
2 なお、原告らは、榛東村が、前記事前協議を支援し、これを推進していることからみて、同村は前記賃貸借契約の締結に強い意図を有している旨主張するが、前記「その行為が相当の確実さをもって予測されうる」といえるためには、単に、行政庁が当該行為を強く意図しているといった主観的確実性では足りず、殊に、右行為が第三者的機関の許認可等にかかる場合には、その許認可が得られることが相当の確実性をもって予測されるといった客観的確実性をそなえなければならないと解すべきであるから、右榛東村の意図のみをもって、被告が本件賃貸借契約を締結することについて相当の確実性があるとはいえない。
四 請求の原因に対する認否
1 請求の原因1及び2を認める。
2 同3(一)のうち、村有林が貴重な文化財であり、その維持、管理、利用が村民の福祉に基づくものでなければならないとの点を認め、その余を争う。同(二)を争い、同(三)及び同(四)を否認する。
3 同4を争う。
4 同5を認める。
五 被告の主張
1 地方自治法上、公有財産のうち普通財産は、議会の議決により貸付が可能であるところ(地方自治法二三七条二項、二三八条の五第一項)、榛東村議会は、昭和六二年六月二二日、本件村有林を訴外会社に賃貸することを前提として、行政財産であった本件村有林を普通財産に移行することを内容とする榛東村財政基金条例の一部改正案を可決した。
右村議会の議決は、村民のゴルフ場建設促進の陳情を受け、既に採択されている榛東村上位部総合一〇ヵ年計画に則ったものであって、被告としては、右村議会の議決を村民の意思として忠実に執行する義務がある。
2 村有林は、育木はもとより水源の涵養、災害防止の目的に資するものであるが、水源涵養や災害防止の面においては、林野庁により保安林指定されており、その指定を受けた村有林は、村が他の目的に利用することは不可能であり、また、育木目的については、村の事業という面からすると、林業不振の現状に加え、村有林の維持・管理に多額の費用がかかるのが実情である。ちなみに、村有林の維持・管理につき、昭和六一年度実績で、一般事務費(担当職員の人件費)の他約一〇〇〇万円の費用がかかっており、同六二年度にも同額の支出が見込まれている。そこで、村有林を他の目的に利用して村財政の財源を確保し、その立て直しを図ることは、村民の生活環境の整備や福祉の向上に役立つ方策であるところ、榛東村は、その所有する村有林二六二万三五〇〇平方メートルのうち、すでに榛名カントリークラブ等のスポーツ施設などに合計四二万三五二平方メートルを賃貸し、その賃料を得ているのであって、本件賃貸も、同じくその方策にそったものである。ことに、本件賃貸の目的であるゴルフ場開発予定地は傾斜地であり、他事業への利用は困難であり、この点からしても、本件村有林をゴルフ場に賃貸して、賃料を得ることは適切な利用方法である。
なお、ゴルフ場開発計画予定地内においても、太郎坊地区約一六万一〇〇〇平方メートルについては、同地の立木は伐採されず、その他でも四割は現況が維持される計画である。
3 本件賃貸により、榛東村には、立木補償二億六一〇六万円、地代年額三二四八万六五三二円、娯楽施設利用税交付金一九五〇万円のほか、固定資産税、法人税等の税収入が見込まれ、年間五〇〇〇万円余の財源となる。この収入は、榛東村の昭和六三年度の一般財源一六億五五五五万五〇〇〇円(なお、予算総額は二二億八一二〇万円である。)の三パーセントに相当するものである。これに加え、本件賃貸は、村民の雇用の場や消費の拡大にも資するものである。
4 訴外会社は、資本金八〇〇〇万円であり、既に昭和六〇年四月からテニス場を経営しているところ、本件賃貸にあたっては、その連帯保証人として、資本金四八〇〇万円の株式会社東和工務店が、工事完成保証人として、株式会社熊谷組がそれぞれ予定されており、本件賃貸の契約相手としての適格性に問題はない。
5 群馬県においてゴルフ場開発事業を行おうとする者は、前記三1のとおり、県条例七条により、開発事業計画について県知事との事前協議の手続きを経なければならないとされ、その手続きの中で、原告らが主張するところの災害防止はもとより開発業者の資力、信用も審査される。ちなみに、開発業者の資力、信用については、県条例一〇条一項七号、県条例施行規則四条中の別記様式第一号計画協議書の事業計画書一六号として開発事業の資金計画が、一七号として事業実績がそれぞれ必要的記載事項とされている。
更に、訴外会社は右事前協議手続きを経た後、本件村有林が、県条例二九条一項七号、県条例施行規則第三章雑則一九条の二に該当することから、本件条例に定める開発事業の承認手続(第二章第二節一四条以下)から除外され、森林法一〇条の二及び都市計画法二九条の各開発行為許可申請手続きを経なければならないことになる。また、群馬県では、ゴルフ場開発に関し、群馬県ゴルフ場開発事業に関する取扱方針が策定され、その指導要領も示されているところ、そこにおいては開発にかかるゴルフ場の地域振興への寄与度等が総合検討されるほか、前記開発事業の承認にあたっては、防災施設を優先的に施行することが指摘されている。
以上に加え、榛東村においても、土地開発指導要綱による指導を行うため、本件賃貸に関して、原告らが主張する災害防止や事業者の適格性等の問題について可能な限りのレベルでその対策が講じられている。
六 被告の主張に対する認否ないし反論
1 被告の主張1のうち、村議会において、ゴルフ場建設のために本件村有林を賃貸することを前提とした榛東村財政調整基金条例の一部改正案が可決成立していることは認める。しかし、村議会議員の中には反対者もおり、議会の多数決は必ずしも村民の意思を代表していない。仮に住民投票によりその可否を問うとすれば、村民の過半数が反対する。事実、昭和五九年九月ころ、当時の村長であった岡部市弥は、村民の過半数の反対により、村有林をゴルフ場に賃貸することを断念したという経緯がある。
2 同2のうち、榛東村が二六二万三五〇〇平方メートルの村有林を有しており、うち四二万三五二平方メートルを賃貸していること、本件ゴルフ場開発予定地が傾斜地であることは認めるが、右開発予定地が他事業への利用が困難な場所であるとの主張は否認する。本件村有林は、各種事業に利用できる利用価値の最も高い場所であり、本件村有林を除けば、他は利用価値が無いに等しい。
3 本件賃貸により年間五〇〇〇万円の財源が見込まれるとしても、右金額は村財政の予算における歳入額約二五億円の二パーセントに過ぎず、他の財源を研究すべきである。また、立木補償として二億六一〇六万円が見込まれるとしても、榛東村村有林は、明治二三年、当時の御料地二六〇町歩を借用ないし払い下げを受けて植林事業を興し、以来一〇〇年にわたり村民が営々として育成してきたものであって、貴重な天然資源であると同時に文化財でもあるのであって、本件村有林の立木を伐採し、賃貸することは、収入を得るために手段を選ばぬ無謀な行為といわざるをえない。
第三証拠<省略>
理由
一 被告は、原告らの本訴請求に対し、本件賃貸がなされることが相当の確実さをもって予測される場合でないから、原告らの本件訴えは不適法であると主張するので、この点について判断する。
いずれも成立に争いがない甲第一ないし第八号証、乙第三号証、第四号証の一ないし三、第五号証、第六号証、証人笹澤勉の証言、原告内海三郎本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、以下1ないし4の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。
1 被告は、訴外会社から、同社が計画しているゴルフ場の建設用地として榛東村の村有林を借用したい旨の申し入れがあったことで、村有林のうち、本件村有林六一万九〇〇〇平方メートルを訴外会社に賃貸する意向を固め、榛東村財政基金条例(昭和三九年六月一五日条例第一三号)第二条(1)により、災害復旧、地方債の繰上償還その他財源の不足を生じたときの財源としての財政調整基金に属する財産であるとされていた本件村有林を右財政調整基金に属する財産から除外し、普通財産とすべく、昭和六二年六月一八日、前記条項中面積「二一六四六二八平方メートル」を「一五一九三二三平方メートル」に改めることを内容とする「榛東村財政基金条例の一部改正について」と題する議案(村長提出議案第三八号)を榛東村村議会に提出したところ、同議会は、同月二二日、右条例改正案を原案どおり可決した(被告が、訴外会社に対し、村有林をゴルフ場建設用地として賃貸することを前提として、「榛東村財政基金条例の一部改正について」と題する議案を榛東村議会に提出し、同議会が右議案を可決したことは争いがない。)。これに対し、原告らは、ゴルフ場造成のために村有林を伐採すれば、集中豪雨などのあったときに水害の発生するおそれがあること、訴外会社の経営基盤が弱いこと等を主たる違法事由として、本件賃貸に反対している。
2 群馬県においては、県土の保全と秩序ある開発を図り、もって県民の福祉に寄与することを目的として、大規模土地開発事業の施工に関し必要な規制を行うために県条例を制定しており、土地の区画形質の変更を伴う事業で、当該事業に係る一団の土地の面積が五ヘクタール以上のものを、大規模土地開発事業(以下「開発事業」という。)として、規制の対象と定め(二条一項)、「開発事業を行おうとする者は、当該開発事業に係る計画を作成し、所有権その他土地を利用する権利の取得に係る契約の締結前に、知事に協議しなければならない。」(七条)と規定し、開発事業を行おうとする者に対し、県条例九条が定める事項を記載した協議書(以下「計画協議書」という。)を提出して、知事との協議(以下「事前協議」という。)を行うことを義務づけている。そして、訴外会社のゴルフ場建設計画(以下「本件ゴルフ場建設計画」という。)は、開発事業に該当するため、訴外会社が榛東村と本件村有林の賃貸借契約を締結するためには、事前協議が必要であり、そのため、訴外会社は、昭和六二年一〇月三日、榛東村に計画協議書を提出し、同計画協議書は、同村を経由して、同年一一月末ころ、群馬県知事に提出され、事前協議に付されることとなった。
3 県条例一〇条一項は、「知事は、第七条の規定による協議があったときは、その協議に係る開発事業計画について、次の各号に掲げる事項を審査し、その協議をした者に対して当該開発事業計画に係る異議の有無を通知するものとする。この場合において、異議あるときは、その理由をあわせて通知するものとする。」と規定し、事前協議において、県知事が事前協議に係る開発事業計画を審査することを定めている。
ちなみに、県条例一〇条一項の定める審査事項は、(1)いつ水、たん水、がけくずれ等による災害の発生のおそれのある土地に関する事項、(2)開発区域に含まれる土地の利用状況に関する事項、(3)開発事業計画に対応する公共施設及び公益的施設についての整備の見通しに関する事項、(4)用水の確保の見通しに関する事項、(5)公害の防止に関する事項、(6)開発事業の地域への貢献度に関する事項、(7)開発事業を行おうとする者の資力及び信用に関する事項、(8)その他規則に定める事項として県条例施行規則六条に定める事項、であり、更に、県条例一〇条二項は、右各事項の審査についての細目を県条例施行規則の定めに委ね、同施行規則七条は、これを受けて、別紙のとおりの多岐にわたる細目を定めている。
4 ところで、事前協議における事業開発計画の県知事による審査手続は、実際上、別表大規模土地開発事業計画協議書の事務処理手続一覧のとおり、専ら企画部土地対策課、土地利用対策専門部会及び企画調整会議の各機関が、大規模土地開発事業計画協議書の事務処理要領(昭和五三年九月二一日策定)に基づいて、これにあたり、この審査手続きを経た後、群馬県大規模土地開発事業審議会に諮問し、その答申を受けたうえで、右審査結果について、県知事の意見表明という形で事前協議に係る開発事業計画に対する異議の有無を協議者に通知するという手続きがとられている。
そして、事前協議に付された本件ゴルフ場建設計画の審査手続は、現時点においては、土地利用対策専門部会による現地調査が実施された程度で、未だ、本件ゴルフ場建設計画に対する県知事の意見表明の段階には至っていない。
以上の事実によれば、本件ゴルフ場建設計画に関する事前協議の手続きは未だ終了しておらず、この先、県知事が、何時、いかなる内容の意見表明をするかについては、現時点において予測ができない状態にあることが認められる。
そして、開発事業計画に対する県知事の異議の有無の通知は、事前協議に係る開発計画に対し、法的拘束力を有するものではないから、仮に、県知事が本件ゴルフ場建設計画に対し、異議を述べた場合であっても、本件賃貸が不可能になるわけではないが、前掲乙第五号証、証人笹澤勉の証言によれば、県条例四条は、市町村の責務として、「市町村は、県の施策に協力するとともに、当該市町村における土地の保全と秩序ある開発を図るように努めるものとする。」と定め、市町村の県の施策への協力義務を定めていること(なお、県条例五条は、更に、事業主及び工事施行者の責務として、県または市町村が実施する施策への協議義務を定めている。)、反面、県条例は、事前協議があったときは、あらかじめ、関係市町村の長の意見を聞かなければならない旨規定(一〇条四項)し、県知事に対し、事前協議に係る開発事業計画の審査にあたって、当該市町村長の意見を聴取すべき義務を定めており、事前協議の中に当該市町村の意見を反映させる手続きが取られていること、被告においても、本件ゴルフ場建設計画に対し、県知事から異議が述べられた場合には、前記県条例上の市町村の協力義務からして、訴外会社との間で、本件村有林の賃貸借契約を締結することは、事実上できないものと考えていること、が認められ、この認定に反する証拠はないから、実質的には、県知事の意見表明は、本件賃貸に対して事実上の拘束力を有しているものと認められる。
してみると、前認定のとおり、本件ゴルフ場建設計画について、事前協議が終了しておらず、県知事が、右計画に対し、いかなる意見表明をするか未だ不明である現時点においては、単に被告が本件賃貸をする可能性が漠然と存在するにとどまり、相当程度の客観的・具体的可能性があるものとはいえず、したがって、地方自治法二四二条一項にいう「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」に該当しないというべきである。のみならず、仮に知事の意見表明の結果、本件村有林の賃貸借契約が締結されることがあるとしても、前認定のとおり、大規模土地開発事業の施工に関し必要な規制を行うことにより、県土の保全と秩序ある開発を図り、もって県民の福祉に寄与することを目的として、いつ水、たん水、崖崩れ等による災害の発生のおそれのある土地に関する事項並びに開発事業を行おうとする者の資力及び信用に関する事項等について、事前協議が行われることに鑑みれば、原告らが違法事由の中核として憂慮する災害のおそれと、訴外会社の資力信用の欠如等については、事前協議の段階において、これらに対する適切な措置が講ぜられるものと期待してよいと考えられるから、いわゆる違法の蓋然性が高度に存するとは断定できず、この点からいっても、原告らの主張する違法行為が近い将来行われる確実性があるとは認められない。
二 以上のとおりであるから、本件訴えは訴訟要件を欠き、不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 清水悠爾 田中由子 河合裕行)
物件目録、別紙、別表<省略>